主要研究・重点研究 | ||
・急激な気象変化に伴う雪崩災害に対する道路管理の判断支援に関する研究(R4-R9) 近年、急激な気象変化に伴い厳冬期に大雨が降ることによって雪崩が発生しています。それに加えて、融雪や降雨により雪氷が土砂を伴って移動し、災害が発生することがあります。これらの災害はその要因も複合的であることから、発生の予測は現状では困難であり、道路管理者が被害防止の判断を的確に行うための危険箇所や危険度を把握・予測する技術開発が求められています。 本研究は、雪氷チームと共同で実施し、厳冬期の大雨や、急激な気温上昇による斜面積雪と積雪下の土砂の安定性評価手法と雪崩災害に対する道路管理の判断支援手法を開発することを目的としています。 |
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・落石危険斜面における効率的な調査手法と対策工の評価技術の開発(R4-R9) 落石・岩盤崩壊等の発生は、人命に直接的に関わるとともに、道路網が寸断されるなど地域生活に大きな影響を与えています。その対策として各種落石防護施設が設置されていますが、斜面の経年変化等により、これまで対策不要とされている自然斜面やのり面背後からの落石等の災害が発生しています。 そこで、防災地質チームでは、UAVを用いて、落石が発生する懸念がある斜面を広範囲に調査し、画像処理技術やAI解析等を用いて落石が発生した箇所や今後発生しそうな箇所を効率的に抽出する手法について研究しています。 また、研究分担として寒地構造チームでは、大きな作用力に対応した数値解析を活用した落石防護施設の設計手法について研究しています。 →寒地構造チームへ ・道路斜面における高密度3次元点群データを用いた点検手法に関する研究(R5-R7) 対策や管理上注意を要する斜面では「防災カルテ」が作成され、定期的な点検対象箇所となっています。従来のカルテ点検は手書きスケッチ及び写真を基にした目視点検のため、着目箇所以外では過去の点検結果との厳密な比較は難しく、斜面の崩壊等の見逃しのリスクがあります。点検範囲の変状を見逃さず、かつ効率的な点検を実施するためには、目視により定性的に行われている防災カルテ点検を、面的かつ定量的に実施する新たな評価及び診断技術の開発が必要です。 本研究では見逃しのない道路斜面の防災カルテ点検の実現を目的とし、デジタル技術を用いた3次元点群データによる効果的な点検手法の提案を行います。
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・環境負荷対策が必要な発生土の安定性評価に関する研究(R4-R9) トンネル建設などで発生する一部の建設発生土には、ヒ素や鉛などの自然由来の重金属や酸性水を溶出するものがあり、適切な調査と対策が求められています。この自然由来重金属等含有土への対応としては、施工前の調査段階において対策の要否や対策レベルを適切に評価できることが理想的ですが、施工前の調査において同質の地質でも溶出濃度に大きなばらつきが認められ、施工中に対策要否を判断せざるを得ないケースがあることから、対策土量を多めに想定する必要があり、対策コストが高額となる傾向にあります。 そこで本研究では、自然由来重金属等を含有する発生土の有効利用の拡大と対策コスト・環境負荷の縮減を目的に、自然由来重金属等の発生源となる岩種や鉱物等の適切な評価・分類に基づく事前調査の高精度化と、実際の溶出現象を適切に評価可能な対策工のモニタリング法について、地質チームと共同で研究を実施しています。 |
防災地質チームの研究課題
防災地質チームは、斜面災害や環境汚染などの地質に起因するリスクから人々の暮らしを守るための技術、厳しい自然環境の下の社会資本の効率的な整備や維持管理を効率良く行うための技術に関する研究を行っています。
基盤研究 | |
・植物繊維による重金属類を含む排水の浄化処理方法の実用化に関する研究(R5-R7) トンネルなどの工事では、掘削した土砂や岩石から有毒な重金属類を含む水が発生する場合があり、その処理方法が高額となる場合があることなど、多くの課題を抱えています。本研究では、植物繊維を活用した自然由来重金属類を含む水の浄化処理技術を開発し、環境および経済性を考慮した土木事業における実用化を目指しています。 |
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・蛇紋岩地山の地質調査手法に関する研究(R5-R7) 蛇紋岩とは、地下深部のマントルかんらん岩が低密度の含水鉱物(蛇紋石)に置き換わることで形成される岩石の総称です。蛇紋岩地山のトンネル掘削では、想定外の切羽の崩落や地山変状が発生するなど、難工事となることが多く、施工の安全性と建設コストの増加が課題となっています。本研究では、蛇紋岩の幅広い物性の特徴を、蛇紋岩化の度合いとと種類により定量的に分類し、その分類をもって蛇紋岩地山の物理探査結果を解釈することで、トンネル施工時に問題となる脆弱箇所を事前に推定する方法を検討します。本研究の進展により蛇紋岩地山の評価方法が提案されることで、蛇紋岩地山のトンネル掘削がより安全かつ経済的に実施できることが期待されます。 |
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・ハンドヘルド型分析装置を用いた地質試料の重金属溶出判定法に関する研究(R5-R7) 一部のトンネルでは、掘削土から自然由来の有害重金属元素が溶出することが知られています。現状では、採取試料を対象に短期の溶出試験が実施されていますが、時間と検査コストの問題から試験数量が制限されてしまい、トンネル地質に想定外の不均質性が出現した場合などで、判定漏れが生じる事例が散見されます。そこで本研究では、重金属の溶出をより簡便かつ迅速に判定する方法の開発として、ハンドヘルド型の化学分析装置を使った地質試料の重金属元素の分析法について研究を行っています。本研究の成果により、トンネル掘削現場において重金属溶出判定が、短時間かつ効率的に実施可能となること、また、多試料の分析が可能となることで、有害重金属の判定漏れの低減が期待されます。 |
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